はじめに
2023年12月13日、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の誘導目標を5・25~5・5%に据え置くと決めました。これは、インフレの冷え込みの新たな兆候を受けて、金融引き締めのペースを緩めたものとみられます。
このニュースは、米国の経済や金融に大きな影響を与えるだけでなく、世界の経済や金融にも様々な影響を及ぼします。政策金利の据え置きは、インフレ抑制の効果と景気減速のリスクのバランスをとる難しい判断だったのでしょうか。また、ドル安や金利低下の動きは、どのようなメリットやデメリットをもたらすのでしょうか。
本記事では、FRBの政策金利の据え置きについて、その理由と影響について考察していきます。米国の金融政策に関心のある方は、ぜひ最後までお読みください。
要約
- 12月13日のFOMCで、FRBは政策金利を3会合連続で据え置くことを決定した。これは、インフレの冷え込みの新たな兆候を受けて、金融引き締めのペースを緩めたものとみられる。
- FRBは声明で、「インフレ率はこの1年で緩和したが、依然として高水準にある」としつつ、経済への影響を見極めるため、金利を据え置いた。同時に公表された経済見通しでは、2024年末の政策金利の水準を4.6%とし、3回の利下げの想定も示している。
- パウエル議長は記者会見で、インフレの主因となっているサービス価格について「住居費は来年のどこかで減速すると思う。しかし、ほかのサービス価格の減速には、かなりの期間を要するだろう。そのため、われわれはしばらく高い金利を維持しなければいけないと考えている」と述べた。
影響
- インフレ抑制の効果:政策金利を据え置いたことで、銀行の貸出金利や社債金利、為替レート、株価などに波及し、結果として家計の消費や企業の設備投資などあらゆる経済活動に「ドミノ倒し」のように影響を及ぼします。基本的に政策金利を上げれば、需要が弱まり、インフレを抑制する動きにつながります。米国では、新型コロナウイルスショック後、急ピッチに進めてきた利上げの局面が収束に向かうなか、今後は利下げに転じるタイミングに注目が集まっています。
- 景気の減速のリスク:政策金利を据え置いたことで、金融引き締めのペースを緩めたものとみられますが、それでも政策金利は景気に中立的とされる均衡金利2.5%を上回る水準が長期間続くと見込まれています。これは、景気の減速や後退のリスクを高める可能性があります。実際、FRBは2023年の実質GDP成長率の見通しを前回の1.2%から0.5%に下方改定し、失業率の見通しも2024年に4.6%となっており、景気の後退を意味するのではないのかとの問いに対しては「景気後退が起こるのか、起こった場合どの程度になるかは誰にもわからない」と応じています。
- 世界経済への影響:政策金利を据え置いたことで、米国の金利水準が他国との差を縮めることになります。これは、米国への資金流入を減らし、ドル安につながる可能性があります。ドル安は、米国の輸出競争力を高める一方、輸入品の価格を上昇させることになります。また、ドル安は、ドル建ての債務を抱える途上国にとっては返済負担を軽減する効果がありますが、ドルに連動している通貨を持つ国にとってはインフレ圧力を高めることになります。さらに、米国の金利水準が低下することで、世界の金利水準も低下する可能性があります。これは、金融緩和の余地を失った日本や欧州などの経済にとっては、景気刺激の手段が限られることを意味します。
終わりに
米国の金融政策は、世界の経済や金融に大きな影響を与えます。今回のFOMCで、FRBは政策金利を据え置くことを決めましたが、これはインフレ抑制の効果と景気減速のリスクのバランスをとる難しい判断だったと言えるでしょう。また、ドル安や金利低下の動きは、米国以外の国々にも様々な影響を及ぼします。今後は、FRBの金融政策の方向性や経済見通しに注目が集まるとともに、世界の経済や金融の動向にも目を向ける必要があります。
まとめ
- 12月13日のFOMCで、FRBは政策金利を3会合連続で据え置くことを決定した。
- これは、インフレの冷え込みの新たな兆候を受けて、金融引き締めのペースを緩めたものとみられる。
- 政策金利の据え置きは、インフレ抑制の効果と景気減速のリスクのバランスをとる難しい判断だった。
- ドル安や金利低下の動きは、米国以外の国々にも様々な影響を及ぼす。
- 今後は、FRBの金融政策の方向性や経済見通しに注目が集まるとともに、世界の経済や金融の動向にも目を向ける必要がある。
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