公益法人の利益追求許容:社会貢献か利権づくりか?

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はじめに

公益法人の利益追求許容についての政府の新方針が、社会的な課題の解決を目的とする新たな会社形態の設立に向けた検討に入るというニュースがありました。この記事では、その新方針の紹介と、それに対する私たちの視点を述べます。

公益法人とは

公益法人は、社会的な課題解決を目的として設立され、その活動は非営利を前提としています。公益法人は、社会福祉、教育、文化など、多岐にわたる分野で活動を行い、その活動は公共の利益に資するものでなければなりません。

政府の新方針

しかし、政府は最近、公益法人が利益を出したり財産をためたりする際の制限を緩和する新方針を打ち出しました。これにより、公益法人は災害などのリスクに備えやすくし、経営の安定につなげることができるとされています。

この記事では、その新方針の詳細と、それに対する私たちの視点を述べます。具体的には、公益法人の本来の性格と政府方針の矛盾、利益追求の許容によるリスク、透明性と監督の不足について考察します。

公益法人の本来の性格と政府方針の矛盾

公益法人の目的と役割の解説

公益法人とは、公益を目的とする事業を行う民間の法人のことです。公益法人には、公益社団法人と公益財団法人の2種類があります。公益社団法人は、社員によって組織される法人で、公益財団法人は、財産によって組織される法人です。公益法人は、公益法人認定法に基づいて、内閣総理大臣または都道府県知事の所管となり、公益性の認定を受けることで、税制上の優遇措置を受けることができます。

公益法人は、社会的課題の解決に貢献する多様な事業を行っています。例えば、学術研究、文化芸術、社会福祉、環境保全、国際協力、人権擁護、災害救援などの分野で、公益目的事業と呼ばれる事業を展開しています。公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものとされています。公益法人は、公益目的事業に対して、個人や法人からの寄附を受けることができます。寄附者は、所得税や法人税の控除を受けることができます。

公益法人は、民間の自主性と創造性に基づいて、公益活動を行う主体として、社会にとって重要な役割を果たしています。公益法人は、政府や市場では十分に対応できない社会的ニーズに応えることで、社会の多様性や活力を高めることができます。また、公益法人は、市民の参加や協働を促進することで、社会の連帯感や信頼感を強化することができます。さらに、公益法人は、政策立案や実施において、政府や他のステークホルダーと対話や協力を行うことで、社会の変革やイノベーションを推進することができます。

政府の新方針と公益法人の本来の性格との矛盾点の指摘

しかし、公益法人の活動に対して、政府は、近年、一方的な方針を打ち出しています。2023年6月に、内閣府は、「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告を公表しました。この報告では、公益法人制度の改革に向けて、以下のようなポイントが示されました。

  • 柔軟・迅速な公益活動展開のために
    • 資金のより効果的な活用のための財務規律(収支相償原則や遊休財産規制)の柔軟化・明確化
    • 柔軟・迅速な事業展開のための行政手続きの簡素化・合理化
  • 国民からの信頼・協力を得ていくために
    • 法人の透明性の一層の向上
    • 法人による自律的なガバナンスの充実
  • 民間による公益的活動の活性化のための環境整備
    • 公益信託制度改革(公益法人認定法と共通の枠組みで公益信託の認可を行う仕組みへ)
    • 公益法人による出資等の資金供給についての考え方の整理
    • 法人・経済界等との対話の推進、インパクト測定・マネジメントの普及

この報告は、公益法人の活動を支援するというよりも、公益法人の活動を制限するという印象を与えます。特に、以下の点において、政府の新方針と公益法人の本来の性格との矛盾が見られます。

  • 収支相償原則や遊休財産規制の柔軟化・明確化という名の下に、公益法人の財務状況に対する行政の介入を強めることで、公益法人の自主性や創造性を損なう恐れがある。
  • 公益法人の透明性の一層の向上という名の下に、公益法人の情報開示や報告義務を増やすことで、公益法人の負担を増やし、公益活動に割く時間や資源を奪う恐れがある。
  • 公益法人による自律的なガバナンスの充実という名の下に、公益法人の組織運営や人事に対する行政の指導や評価を強めることで、公益法人の多様性や個性を失わせる恐れがある。
  • 公益信託制度改革という名の下に、公益法人認定法と共通の枠組みで公益信託の認可を行うことで、公益信託の特徴である柔軟性や自由度を失わせる恐れがある。
  • 公益法人による出資等の資金供給についての考え方の整理という名の下に、公益法人の資金活用に対する行政の規制や監督を強めることで、公益法人の事業展開の幅を狭める恐れがある。
  • 法人・経済界等との対話の推進やインパクト測定・マネジメントの普及という名の下に、公益法人の活動に対する市場原理や経済効率の尺度を適用することで、公益法人の社会的使命や価値観をゆがめる恐れがある。

以上のように、政府の新方針は、公益法人の本来の性格とは相容れないものであると言えます。公益法人は、民間の自主性と創造性に基づいて、公益活動を行う主体として、社会にとって重要な役割を果たしています。公益法人は、政府や市場では十分に対応できない社会的ニーズに応えることで、社会の多様性や活力を高めることができます。また、公益法人は、市民の参加や協働を促進することで、社会の連帯感や信頼感を強化することができます。さらに、公益法人は、政策立案や実施において、政府や他のステークホルダーと対話や協力を行うことで、社会の変革やイノベーションを推進することができます。

公益法人は、社会の公益を追求するための重要な役割を果たしています。しかし、政府の新方針は、その本来の性格とは相容れないものであると言えます。公益法人の活動を制限するという印象を与える政府の新方針は、公益法人の自主性や創造性を損なう恐れがあります。また、公益法人の多様性や個性を失わせる可能性もあります。

利益追求の許容によるリスク

公益法人は、社会的な使命を果たすために、公益目的事業を行う組織です。しかし、公益法人も収益力を高める必要があります。なぜなら、公益法人は、補助金や寄付などの外部資金に頼らず、自主財源を確保することで、安定的な運営を行うことができるからです。

しかし、公益法人が利益追求を許容することには、様々なリスクが伴います。この記事では、公益法人が利益追求を行うことで生じる可能性のあるリスクについて、以下の3つの観点から解説します。

  • 公益性の低下の可能性
  • 資産の不適切な運用や使途逸脱のリスク
  • 税制優遇措置の剥奪のリスク

公益性の低下の可能性

公益法人は、公益目的事業を行うことで、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することが求められます。しかし、公益法人が利益追求に重きを置くようになると、公益性が低下する可能性があります。

例えば、公益法人が、収益性の高い事業に集中し、収益性の低い事業を縮小したり、廃止したりすることが考えられます。この場合、公益法人は、社会的なニーズに応えることができなくなるかもしれません。

また、公益法人が、利益追求のために、公益目的事業と関係のない事業に進出したり、競争的な事業を行ったりすることもあり得ます。この場合、公益法人は、公益目的事業との整合性や独自性を失う恐れがあります。

さらに、公益法人が、利益追求のために、品質や安全性を犠牲にしたり、不正や不祥事を起こしたりすることも考えられます。この場合、公益法人は、社会的な信頼や評価を失う危険があります。

資産の不適切な運用や使途逸脱のリスク

公益法人は、公益目的事業に必要な費用を償う額を超える収入を得てはならないという原則があります。これは、公益法人が、公益目的事業に関係のない資産を蓄積したり、公益目的事業以外の目的に資産を使ったりすることを防ぐためです。

しかし、公益法人が利益追求を行うことで、資産の不適切な運用や使途逸脱のリスクが高まる可能性があります。

例えば、公益法人が、収益性の高い事業から得た資金を、リスクの高い金融商品に投資したり、不動産や株式などの有価証券に過剰に資金を割り当てたりすることが考えられます。この場合、公益法人は、市場の変動や発行体の信用力の低下などによって、資産の価値が減少する危険があります。

また、公益法人が、収益性の高い事業から得た資金を、公益目的事業と関係のない事業に使ったり、役員や職員の給与や福利厚生に使ったりすることもあり得ます。この場合、公益法人は、公益目的事業に必要な資金を確保できなくなる恐れがあります。

税制優遇措置の剥奪のリスク

公益法人は、公益目的事業を行うことで、社会に貢献する組織として、税制上の優遇措置を受けることができます。例えば、所得税や法人税の免除や減免、寄付金の控除や税額控除などがあります。

しかし、公益法人が利益追求を行うことで、税制優遇措置の剥奪のリスクが高まる可能性があります。

例えば、公益法人が、公益目的事業と関係のない事業に進出したり、競争的な事業を行ったりすることで、公益性の基準を満たさなくなることが考えられます。この場合、公益法人は、公益認定を受けたり、維持したりすることができなくなるかもしれません。

また、公益法人が、収益性の高い事業から得た資金を、公益目的事業に還元しなかったり、公益目的事業に必要な費用を超える収入を得たりすることで、収支相償の原則に反することが考えられます。この場合、公益法人は、所得税や法人税の免除や減免などの税制優遇措置を失う可能性があります。

公益法人は、公益目的事業を行うことで、社会に貢献する組織です。しかし、公益法人も収益力を高める必要があります。なぜなら、公益法人は、補助金や寄付などの外部資金に頼らず、自主財源を確保することで、安定的な運営を行うことができるからです。

しかし、公益法人が利益追求を行うことには、様々なリスクが伴います。この記事では、公益法人が利益追求を行うことで生じる可能性のあるリスクについて、以下の3つの観点から解説しました。

  • 公益性の低下の可能性
  • 資産の不適切な運用や使途逸脱のリスク
  • 税制優遇措置の剥奪のリスク

公益法人が利益追求を行うことは、必ずしも悪いことではありません。しかし、公益法人は、利益追求と公益性のバランスを見極め、リスクを適切に管理することが求められます。公益法人は、自己の活動が社会にとって有益であることを示すために、透明性を確保し、適切なガバナンスを行うことが必要です。

透明性と監督の不足

制限緩和に伴う透明性の問題の提示

制限緩和に伴う透明性の問題は、多くの業界で深刻な課題となっています。特に、税制改正やデジタルプラットフォームの規制など、様々な分野でこの問題が浮き彫りになっています。

税制改正の例を見てみましょう。税制改正は、国民から選ばれた国会議員によって行われます。しかし、その議論の透明性が必ずしも確保されていないという問題があります。国民は、国会議員の決定に従う理由として、脱税が罰せられるという理由の他に、国民の代表である国会議員の決定には正当性があると考えています。

一方、デジタルプラットフォームの規制においても、透明性の問題が指摘されています。特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上が求められていますが、その具体的な方法については明確な指針がないという問題があります。

監督体制の不足とその問題点の解説

公益法人の監督体制の不足もまた、深刻な問題となっています。公益法人は、公益目的事業を行うことで、社会に貢献する組織です。しかし、公益法人の活動は、内閣総理大臣または都道府県知事の所管となり、公益性の認定を受けることで、税制上の優遇措置を受けることができます。そのため、公益法人の活動は、公的な監督を受けることが求められます。

しかし、公益法人の監督体制には、以下のような問題があります。

  • 公益法人の活動の透明性が確保されていない場合、公益法人の活動の実態把握が困難であり、適切な監督が行えない可能性があります。
  • 公益法人の活動の評価基準や評価方法が明確でない場合、公益法人の活動の評価が主観的になり、公平性や公正性が損なわれる可能性があります。
  • 公益法人の活動の評価結果が公開されていない場合、公益法人の活動の評価結果を知ることができず、公益法人の活動の信頼性が低下する可能性があります。

以上のように、公益法人の透明性と監督の不足は、深刻な問題となっています。

終わりに

政府の新方針に対する否定的な見解の提出

公益法人の利益追求許容についての政府の新方針は、一見すると公益法人の活動を支援するもののように見えますが、その背後には多くの問題が潜んでいます。公益法人の本来の性格と政府方針の矛盾、利益追求の許容によるリスク、透明性と監督の不足といった問題が明らかになりました。

公益法人は、社会的な使命を果たすために、公益目的事業を行う組織です。しかし、公益法人が利益追求を許容することにより、その公益性が低下する可能性があります。また、公益法人の活動の透明性が確保されず、適切な監督が行えない可能性もあります。

公益法人の利益追求許容が新たな利権づくりの布石である可能性の指摘

さらに、公益法人の利益追求許容が新たな利権づくりの布石である可能性も指摘されています。公益法人が利益追求を行うことで、その活動が市場原理に従うようになり、公益性が二の次になる可能性があります。また、公益法人が利益追求を行うことで、その活動が特定の利益団体や企業に利用される可能性もあります。

記事のまとめと結論の提示

以上のように、公益法人の利益追求許容についての政府の新方針は、多くの問題を抱えています。公益法人は、社会的な使命を果たすために、公益目的事業を行う組織であり、その活動は公共の利益に資するものでなければなりません。しかし、公益法人が利益追求を許容することにより、その公益性が低下する可能性があります。

公益法人の活動は、公的な監督を受けることが求められますが、その監督体制には多くの問題があります。公益法人の活動の透明性が確保されず、適切な監督が行えない可能性があります。また、公益法人の活動が特定の利益団体や企業に利用される可能性もあります。

これらの問題を解決するためには、公益法人の活動の透明性を確保し、適切な監督体制を整備することが必要です。また、公益法人が利益追求を行うことによるリスクを適切に管理することも重要です。

公益法人は、社会的な使命を果たすために、公益目的事業を行う組織であり、その活動は公共の利益に資するものでなければなりません。そのため、公益法人の活動は、公共の利益を最優先に考えるべきです。公益法人の利益追求許容についての政府の新方針は、その原則を忘れてはならないということを、私たちは強く主張します。

以上が、この記事の結論となります。公益法人の活動は、社会全体の利益に資するものであり、その活動は公共の利益を最優先に考えるべきです。その原則を忘れてはならないということを、強く主張します。

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